加齢黄斑変性

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  • 加齢黄斑変性症とiPS細胞
    
    関西黄斑変性友の会 髙田 忍

    「網膜再生医療の現場から」という講演が11月21日兵庫県宝塚市でありました。講師は理化学研究所生命機能科学研究センター研究員大西暁士先生です。理化学研究所は加齢黄斑変性症の患者に対してiPS細胞から作成した網膜色素上皮細胞移植の臨床研究をしている研究機関です。
    その要点を、関連情報と共にまとめました。 (2018,11,23)

     

     

    加齢黄斑変性症には萎縮型と滲出型がある。


    萎縮型は網膜の下にある網膜色素上皮細胞(RPE細胞)が委縮することにより網膜が障害され徐々に視力が低下する症状である。


    滲出型は網膜色素上皮細胞に老廃物がたまると、これを処理しようと新たに血管が生じる。この新生血管がもろいため破れて出血すると網膜に影響を与える。その際、眼の中心部が暗くなり視力の低下や物が歪んで見える症状が出る。
    萎縮型には治療はない。滲出型は新生血管の成長を抑える薬剤(抗VEGF薬)を注射する治療や弱いレーザーで新生血管を縮小させる治療が行われてきた。


    理化学研究所が進めている臨床研究はiPS細胞から網膜色素上皮細胞を作り移植するものである。これを再生医療という。



    再生医療は特に新しい医療技術ではなく腎臓移植や骨髄移植と同じ考えのよるものだ。
    異なる点は移植するための新しい細胞を作ることである。先ず、新しい細胞として考えられたのがES細胞で、日本語では胚性多能性幹細胞という。受精卵(胚性)から作るので、人の体のどのような細胞(多能性)にも変わることが出来る性質を持つ。しかし、人の受精卵を使うので倫理上の問題が指摘されてきた。


    そこで受精卵を使わないiPS細胞が考え出された。日本語では人工多能性幹細胞という。受精卵から作るのではなく、既に出来上がった人の体の細胞から逆方向に向かって、どのような細胞(多能性)にも変わりうる細胞を作る。具体的には皮膚や血液などの体細胞に四つの遺伝子を加えて培養して多能性細胞を作る。京都大学の山中伸弥先生が開発しノーベル賞を受賞された。


    このiPS細胞にさらに一定の物質を加えると血液、筋肉、神経などの細胞に分化し増殖する。どのような物質を加えるかは発生学という学問によってある程度推定できる。


    最近、心臓の細胞やパーキンソン病の治療のためのドパミン神経前駆細胞、対がん免疫細胞のことが報道された。

     




    2014年9月、加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作ったシート状の網膜色素上皮細胞を移植する臨床研究が行われた。経過は順調で視力は安定している。この臨床研究では、患者自身の皮膚の細胞が使われた。これを自家細胞という。自家細胞は拒絶反応の心配はないが、自分の細胞から培養して安全性を確認するなどに10か月の時間を要し、その上数千万円の費用がかかる。


    そこで、他人の細胞(他家細胞)を使うことが考えられた。ある特定の遺伝子を持つ人の細胞から日本人の14%をカバーできる。O型の血液型が他の血液型の人に輸血できることに似ている。すでに京都大学iPS細胞研究所では、日本赤十字社の協力を得て多くの日本人に適合できるiPS細胞の備蓄がなされている。備蓄できるので時間と費用が節約できる。


    昨年初めから11月まで5人の患者に多家細胞のiPS細胞から作られた網膜色素上皮細胞(RPE細胞)が移植された。2014年の時はシート状の細胞が移植されたが、2017年は懸濁液を注射した。経過は順調で視力も安定している。
    今後の計画は5人の患者の臨床研究の結果が出た後、時期は確定していないが全国の他の施設でも臨床研究を行う計画である。その際は公表され、患者募集も行われると思われる

     

    次の臨床研究の患者募集が行われた場合は、募集要項などを会員の皆さんにお知らせするようにいたします。

     

     

     

     

    iPS細胞を作るのに、これまで人の手と目に頼ってきた。人の手や目は、人によって個人差がある。安定したiPS細胞を作り培養するためにロボットが開発され、培養されたiPS細胞を評価するために、人の目ではなくAI(人工知能)による評価がされている。


     

    iPS細胞の応用には、再生医療の他に創薬がある。創薬はiPS細胞に色々な薬剤を試してその効果を確かめるものである。最近では、筋肉が骨に変化する難病を治療する薬のことが報道されている。理化学研究所では、網膜疾患を有する患者由来iPS細胞から分化誘導した人工立体網膜を用いて試験管内での病態解析・創薬の研究が進められている。

    お知らせ

    理化学研究所(神戸)の見学会を来年3月頃に計画しています。iPS細胞の臨床研究など最先端の医療技術を知る良い機会になると思います。詳細は決まり次第連絡いたします。多数の参加をお待ちしています。

2018/11/23

 

  • 二つの講演から  髙田 忍

    10月14日関西テレビ、なんでもアリーナで京都大学山中伸弥教授の、10月1日日本ライトハウス展で理化学研究所の高橋政代先生の講演を聞いた。その要約を記す。

     

    山中伸弥教授 「iPS細胞の研究10年」

     2007年にヒトの皮膚細胞に4つの遺伝子を加えiPS細胞を作ってから10年になる。iPS細胞の特徴は無限に増えることと、脳や心臓など様々な細胞になることである。iPS細胞の研究は再生医療と薬の開発である。

     再生医療としては、理化学研究所の高橋政代先生が2014年に加齢黄斑変性の患者にシート状のiPS細胞を移植したのが初めてである。3年経った現在経過は順調である。この患者のiPS細胞は患者本人の細胞から作ったものである。患者の細胞から作るのは、二つの問題がある。品質評価に時間がかかることと、費用が掛かることである。

     そこで、今年の2月から臨床研究している患者は他家細胞という他人の細胞から作田tものを移植した。ただ、他人の細胞といっても免疫性の問題がある。免疫の方が異なると排除する。しかし、何百人に一人の割合で誰にでも適合する遺伝子を持った人がいる。この人を刈りにスーパードナーと呼んでいる。二名のスーパードナーから日本人の24%をカバーできる。このような人14名から同意を取り付けた。54%カバーできることになる。

     現状の研究レベルは富士登山に例えれば、バスで行ける5合目に過ぎない。この先に難所が待ち構えている。

     問題は研究に携わる人の大半が非正規雇用であることだ。正規雇用にするためには安定した研究費が必要になる。そこで、アメリカの研究機関のように寄付で賄えるようにしたい。協力をお願いしたい。

     

    iPS細胞研究所ホームページ http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/

     

    高橋政代先生「神戸アイセンターについて」

     来る12月1日に神戸アイセンターが開設される。場所は神戸のポートアイランド、理化学研究所と神戸中央市民病院の間にある。

     私がこれまで研究してきた再生医療は手段であって目的ではない。先端的な研究をするには一般的な医療と合体して進めなければならない。ロービジョンケアの窓口になる。

     再生医療と対をなすロービジョンケアを広め、isee!運動で就労支援、視覚障害に対する意識の改革を行うことが必要であり、それが真の再生医療につながる。

     このisee!運動は「社会から支えられる」側だった視覚障害者に「社会を支える」側になってもらうため、すべての人の「視覚障害者」に対する意識を変革する運動である。

     NEXTVISION という団体が運営する。神戸アイセンター二階にはビジョンパークが開設される。ここではさまざまな活動を通じて楽しみながら学び考えることが出来る。

     事務局から:神戸アイセンターが開設されたら、訪ねてみてはいかがでしょうか。

    NEXTVISIONホームページ https://nextvision.or.jp/

     

    講演終了後質疑応答があり質問した

    髙田質問

     2月に神戸中央市民病院で臨床研究をするとの発表を受けて、会員にアンケート調査をした。回答者の半数は募集条件に適合しない、残り半数は不安があるとの結果であった。不安を払しょくする方法はあるか。

    高橋先生の回答

     不安があって当然である。臨床研究は治療を目的とするものではない。患者は体力を必要とする。新しい医学の発展に寄与するとの気構えを持った人が求められる。

     

  • ものが見える仕組み

 光は角膜、水晶体、硝子体といった透明な組織を通って網膜に届きます。

網膜はその光を電気信号に変えて脳へ送ります。脳は受け取った

 

眼球断面図

眼球断面図


映像として認識します。これが、
信号を解読して形や色のあるものが見える仕組みです。

     

 網膜の真ん中には黄斑と呼ばれる部分があります。黄斑にはものを見る細胞が密集していて、私たちはここでものの詳細や色を見分けています。さらにその真ん中には、ものを見るために特に重要となる中心窩というくぼみがあります。

 

 網膜の下には血管が豊富な脈絡膜があり、網膜へ酸素や栄養を供給しています。

 

 

  • 加齢黄斑変性

 

 加齢黄斑変性はこの黄斑が侵される病気です。直線が歪んで見える、中心が黒く見える、ぼやけて見える、色が識別しにくいなどの症状が現れ、視力が低下して日常生活に不便が生じます。

 

加齢黄斑変性には2つのタイプがあります。

 

滲出型:                                  

 脈絡膜から生えてくる新生血管が関係しています。新生血管は異常な血管でもろくて破れやすく、出血や水漏れをおこして黄斑を障害します。なぜ新生血管が生えてくるのか、はっきりした原因はまだわかっていません。

 

萎縮型:

 黄斑そのものが徐々に萎縮して弱っていきます。新生血管は関係していません。滲出型に比べると進行は緩やかですが、時間が経つと新生血管が生えて、滲出型に変わることもあります。

 

 

  • 患者さんの数

 50歳以上の70人に1人が加齢黄斑変性にかかっていると言われ、その数は高齢化に伴い年々増えています。成人の視覚障害を原因疾患別にみると、加齢黄斑変性は第4位です。加齢黄斑変性は欧米では萎縮型が多いのに比べて、日本では滲出型が約9割と圧倒的に多く、また女性に比べて男性に多く発症します。

 

 

  • 治療

 現行の治療は、脈絡膜から生えてきた新生血管の活動を抑えて出血や水漏れを防ぎ、病気の進行を止めて今の視力の維持をはかるものです。

 

滲出型:

  • 抗VEGF薬の注射

 血管内皮増殖因子(VEGF)を抑える薬を眼球に注射して、新生血管を閉塞させます。VEGFは新生血管の成長を促す物質です。

  • 光線力学的療法(PDT)

 光に反応する薬を体内に注射した後、網膜に影響を与えない程度の弱いレーザーをあてて新生血管を閉塞させます。

  • レーザー光凝固

 熱いレーザーを新生血管にあてて固めてしまいます。新生血管が中心窩にかかっていない場合にのみ適用されます。

 

萎縮型:

  • 今のところ積極的な治療法はありません。

 

 日常生活と予防

  加齢黄斑変性の発症には多くの要因が関わっています。その中には、自分では変えることができないものと、自分でも変えることができるものとがあります。

 

  • 自分では変えることができない要因

 まず加齢です。加齢黄斑変性は中高年に多く発症する病気で、年齢が高くなるほど増える傾向があります。加齢以外には、その人が遺伝的に持っている素因があります。

 

  • 自分でも変えることができる要因

 第一に喫煙です。喫煙がこの病気の発症リスクを高めることは、数多くの研究で報告されています。日本では男性患者が女性患者より多いのは、喫煙が原因であると考えられています。

  他に関連があるとされる要因には、肥満や高脂血症、日光などがあります。

  加齢黄斑変性にかかるリスクを少しでも減らすために、私たちが日常生活の中でできることは、これらの自分で変えることができる要因を取り除くことです。 喫煙者はまず禁煙です。脂っこいものが好きな人は食生活を改善して魚や緑黄色野菜を多く食べるよう心がけてください。 外出にはサングラスや医療用の遮光眼鏡をかけて、目によくないと言われる紫外線や青色光から目を守ることも大切です。