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iPS細胞臨床研究「安全性確認」について

4月18日、iPS細胞から作った網膜の細胞移植に関して、安全性が確認されたとの報道がありました。主な全国紙やNHKは次のように大きく報道されました。

iPS網膜「移植1年経ち安全性確認」 最大の壁を突破

   朝日デジタル 

iPS細胞から作った網膜の細胞移植「安全性確認」と発表

   NHKオンラインニュース

iPS、医療応用へ前進 他人から移植、目の難病で安全確認

   日経新聞

 

臨床研究に携わった理化学研究所は、ホームページで次のような発表趣旨(学会資料抜粋)を掲載しています。専門用語が使われていますので、解説いたします。

 

理化学研究所発表趣旨(学会資料抜粋)

•平成29年3月から9月にかけて、滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植の安全性を確認する臨床研究を5例実施し、移植後1年の経過観察を全て終了した。

 

•全例において、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に対する免疫反応を、免疫抑制剤の投与なしに局所ステロイド投与のみで抑えることが可能であった。

 

HLA適合させた他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞の移植後1年での安全性が確認された。

 

他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液

他家iPS細胞の「他家」とは、患者本人ではなく他人の細胞という意味です。

2014年9月に初めて加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った網膜色素上皮細胞の移植手術が行われました。この時は患者本人の細胞(皮膚または血液)から作られました。自分の細胞なので「自家」細胞と言われています。

「自家」細胞の問題は、患者ごとに細胞を作製するために、作製に時間がかかり、治療に使えるかどうかの判定に必要な複雑で高価な検査を繰り返し行う必要があることです。時間と費用の観点から治療の普及が難しいという問題がありました。

そこで、あらかじめ作製しておいた他人由来のiPS細胞を使うことが計画されました。このiPS細胞を提供しているのが京都大学iPS細胞研究所です。健康なボランティアの方からあらかじめiPS細胞を作成し冷凍保存されています。ただし、どんな細胞でもよいわけではなく、多くの患者に拒絶反応を起こしにくい組み合わせのHLA型(別途説明)をもつ細胞が集められています。京都大学によると、現在のところ日本人の約40%をカバーする4種類のiPS細胞が作成されています。

 

最初の臨床研究ではiPS細胞から作ったシート状の細胞が移植されました。シート状の場合は、移植する前に新生血管や傷んだ組織を取り除いた後シートを移植します。そのため手術が難しいと言われています。そこで、安全性を考慮して「懸濁液」の注射に変わりました。「懸濁液」とはiPS細胞を液体の中に分散させたものです。

RPE 細胞懸濁液移植手術 図解

RPE 細胞懸濁液移植手術 図解

HLA型と免疫抑制剤

赤血球にABO式の型があるように、赤血球以外の細胞にも「HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)」と呼ばれる型があります。HLAは体のすべての細胞に存在する蛋白質で、ヒトの免疫に関わる主要組織適合性抗原として働いています。

主要組織適合性抗原とは、自分の細胞と他人の細胞を見分けるための目印のようなもので、これが異なるヒトの間で細胞や臓器を移植すると、移植した細胞や臓器が障害を受け機能しなくなったり、脱落ししたりします。これを拒絶と言います。HLAにはA,B,C,DR,DQ,DPなどの細かい種類があり、この組み合わせでHLA型が決まります。

HLA型がどの程度一致しているかどうかという点は、非血縁者(他人)同士での臓器や移植において極めて重要であり、iPS細胞から作った網膜細胞やその他の細胞を患者に移植して行う治療の場合は、移植するiPS細胞のHLA型と患者のHLA型が近いことが求められています。

HLA型が合わない細胞や臓器が移植されると、体が「よそ者だ」と判断して、免疫細胞がその「よそ者」から体を守ろうと、移植細胞・臓器を攻撃してしまいます。また、逆のことが起ります。移植した免疫細胞が患者の細胞・臓器を「よそ者」と判断し攻撃することがあります。

これらの攻撃を防ぐための薬が免疫抑制剤です。最近では優れた免疫抑制剤が開発されていますのでHLA型が合わなくても臓器移植の成績が良くなっています。しかし、多くの場合、一生に渡り服用しなければなりません。さらに、免疫抑制剤は体の免疫細胞の機能を抑えるため、健康な人には問題にならないような、どこにでもいる菌によって病気になってしまう危険性もあり、十分な注意が必要になります。

最近、京都大学の研究グループが拒絶のリスクの少ないiPS細胞を作る方法を開発し米国の科学誌に発表しました。

いずれ実用化される日が近いことを期待します。

2019-04-29


日本眼科医会 目の健康講座

日本眼科医会の目の健康講座の予定は次の通りです。

 

日時

演題

北海道

9月7日

未定

岩手

9月29日

黄斑の病気

東京

5月11日

糖尿病網膜症と加齢黄斑変性(募集締め切り)

新潟

10月20日

角膜移植、臓器移植、目と健康

三重

10月20日

早期発見が大事!目の病気、目の救急疾患と対策

奈良

2020年2月16日

未定、コンサートあり

島根

10月14日

白内障、緑内障、子供の視力、ロービジョンケアって何

広島

9月29日

ドライアイの話、緑内障

山口

9月1日

糖尿病網膜症、緑内障

徳島

9月29日

ロービジョンケア、白内障

福岡

8月31日

未定

熊本

9月又は10月

未定

大分

9月22日

網膜剥離、糖尿病網膜症

鹿児島

7月7日

遠近両用コンタクトレンズ

2019-04-29

 


「滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植に関する臨床研究」の移植後年の経過観察終了の報告について

概要

神戸市立医療センター中央市民病院、神戸市立神戸アイセンター病院、国立大学法人大阪大学医学部附属病院、国立大学法人京都大学iPS細胞研究所並びに国立研究開発法人理化学研究所が連携して実施した「滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植に関する臨床研究」(総括責任医師 栗本 康夫)に関して、移植後1年の経過観察を終了した旨の報告を、本日第123回日本眼科学会総会(場所:東京国際フォーラム)において下記の通り発表いたしました。

学会発表概要

総会名:第123回日本眼科学会総会(平成31年4月18日~4月21日)
会場:東京国際フォーラム(東京都千代田区)
発表日:平成31年4月18日
演題:加齢黄斑変性に対するHLA適合同種iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植
演者:髙橋 政代(理化学研究所、神戸アイセンター病院)
他11名の共同演者(理化学研究所、神戸アイセンター病院、大阪大学、京都大学)

発表趣旨(学会資料抜粋)

  • 平成29年3月から9月にかけて、滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植の安全性を確認する臨床研究を5例実施し、移植後1年の経過観察を全て終了した。
  • 全例において、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に対する免疫反応を、免疫抑制剤の投与なしに局所ステロイド投与のみで抑えることが可能であった。
  • HLA適合させた他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞の移植後1年での安全性が確認された。
  • 詳細については、論文準備中。

参考情報

平成29年

2月2日

厚生労働大臣より再生医療等提供基準に適合との通知(会見済)

2月6日

臨床研究の開始及び被験者の募集の開始(会見済)

3月28日

1例目の移植手術の実施(中央市民病院)(会見済)

平成30年

1月15日

2例目の被験者に対し、追加手術を実施(会見・報告済)

平成31年

4月18日

移植後1年の経過観察終了(本プレス発表)

問い合わせ

神戸市立神戸アイセンター病院事務局
Tel: 078-381-9870 / E-mail: e_kenkyu[at]kcho.jp ※[at]は@に置き換えてください。

広報活動

http://www.riken.jp/pr/topics/2019/20190418_1/

2019-04-20