京都大学山中伸弥教授と高橋政代先生の 二つの講演から

二つの講演から  髙田 忍

10月14日関西テレビ、なんでもアリーナで京都大学山中伸弥教授の、10月1日日本ライトハウス展で理化学研究所の高橋政代先生の講演を聞いた。その要約を記す。

 

山中伸弥教授 「iPS細胞の研究10年」

 2007年にヒトの皮膚細胞に4つの遺伝子を加えiPS細胞を作ってから10年になる。iPS細胞の特徴は無限に増えることと、脳や心臓など様々な細胞になることである。iPS細胞の研究は再生医療と薬の開発である。

 再生医療としては、理化学研究所の高橋政代先生が2014年に加齢黄斑変性の患者にシート状のiPS細胞を移植したのが初めてである。3年経った現在経過は順調である。この患者のiPS細胞は患者本人の細胞から作ったものである。患者の細胞から作るのは、二つの問題がある。品質評価に時間がかかることと、費用が掛かることである。

 そこで、今年の2月から臨床研究している患者は他家細胞という他人の細胞から作田tものを移植した。ただ、他人の細胞といっても免疫性の問題がある。免疫の方が異なると排除する。しかし、何百人に一人の割合で誰にでも適合する遺伝子を持った人がいる。この人を刈りにスーパードナーと呼んでいる。二名のスーパードナーから日本人の24%をカバーできる。このような人14名から同意を取り付けた。54%カバーできることになる。

 現状の研究レベルは富士登山に例えれば、バスで行ける5合目に過ぎない。この先に難所が待ち構えている。

 問題は研究に携わる人の大半が非正規雇用であることだ。正規雇用にするためには安定した研究費が必要になる。そこで、アメリカの研究機関のように寄付で賄えるようにしたい。協力をお願いしたい。

 

iPS細胞研究所ホームページ http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/

 

高橋政代先生「神戸アイセンターについて」

 来る12月1日に神戸アイセンターが開設される。場所は神戸のポートアイランド、理化学研究所と神戸中央市民病院の間にある。

 私がこれまで研究してきた再生医療は手段であって目的ではない。先端的な研究をするには一般的な医療と合体して進めなければならない。ロービジョンケアの窓口になる。

 再生医療と対をなすロービジョンケアを広め、isee!運動で就労支援、視覚障害に対する意識の改革を行うことが必要であり、それが真の再生医療につながる。

 このisee!運動は「社会から支えられる」側だった視覚障害者に「社会を支える」側になってもらうため、すべての人の「視覚障害者」に対する意識を変革する運動である。

 NEXTVISION という団体が運営する。神戸アイセンター二階にはビジョンパークが開設される。ここではさまざまな活動を通じて楽しみながら学び考えることが出来る。

 事務局から:神戸アイセンターが開設されたら、訪ねてみてはいかがでしょうか。

NEXTVISIONホームページ https://nextvision.or.jp/

 

講演終了後質疑応答があり質問した

髙田質問

 2月に神戸中央市民病院で臨床研究をするとの発表を受けて、会員にアンケート調査をした。回答者の半数は募集条件に適合しない、残り半数は不安があるとの結果であった。不安を払しょくする方法はあるか。

高橋先生の回答

 不安があって当然である。臨床研究は治療を目的とするものではない。患者は体力を必要とする。新しい医学の発展に寄与するとの気構えを持った人が求められる。